POMR(問題志向型診療録)の歯周治療のカルテの例です。
この症例は初期の歯周炎でスケーリングだけの処置で実日数2日で治癒した例です。歯周治療の最も基本的なパターンです。
歯周治療のガイドラインは複雑に見えますが、基本は、検査 → 処置 → 検査 というパターンの繰り返しです。
そして、忘れがちですが、保険治療で行う場合は必ず検査で治療を終了しないといけません。検査がないと治癒とならず、期間をあけても初診になりません。
主訴は必ず入力します。初診日に主訴を登録するとこの内容が頭書きの主訴欄に印字されます。印字例
主訴は患者さんの言葉で記録します。複数の訴えがある場合ここに列挙しても良いですが、その中で最も強い訴えだけをここに書き、それ以外は現病歴に記載したほうが優先順位が明確になります。
入力方法現病歴は主に主訴に関連した症状経過を記載します。その症状が何時発生し、どのように経過したか、またどのような事を行い、その結果がどうであったか患者さんが語ったことを整理しできれば患者自身のことばを使って記載します。
現病歴は、過去の出来事であり、患者さん自身が語る物語です。できる限り先入観のない記録をすることが大事です。入力方法
現症は視診、触診、エアーによる冷温痛や圧迫痛、咬合痛、EPTなどの各種検査記録など客観的なデータの記録です。
現症は現在の状態を記録するものです。
主訴に関連するものではなく現病歴に語られた事に関する検査も行って記録します。また症状がないという陰性所見もできる限り記載しておきます。
パノラマの撮影にはP病名あるいは、全額にちらばる4、5以上の硬組織の疾患あるいは異常、疑い等の病名が必要です。
パノラマを撮影した場合、必ず所見が必要です。全額に渡る歯槽骨の状況、個々の歯の状況、顎関節や上顎洞、下顎管などの所見を網羅的に記載します。
*画像はサンプルですので所見と画像は関係ありません。
PあるいはGの治療をする場合は、必ず歯周検査が必要です。通常、初回は基本検査ですが、精密検査を初回から実施しても問題ありません。
歯周検査の結果によりG、P1〜P3の病名を個々の歯ごとにつけていきます。
Pの進行度に応じて処置がある程度ガイドライン的に決まっていることが大事です。
いままでにかかった病気や怪我の記録です。現在治療中のものもここに記録します。
歯科のカルテにおいては全身的な疾患の記録という意味合いが強いので、アレルギーや服薬記録(お薬手帳の写し)他科での治療の状況などもここに記録します。
タバコや飲酒習慣の記録が主ですが、歯科では特に刷掃習慣、食習慣について詳しく聞いて記録する必要があります。近年ストレスの影響も大きいので、仕事上の悩み、家庭内の介護や人間関係の事なども聞いて記録します。
女性の場合、妊娠等の記録もここにします。
主訴、現病歴、現症を元にその分析や評価、自身の考えを述べます。治療の目標、方針などもここに書きます。
おおまかな治療の方針はこの範疇ですが、具体的な計画は【計画】に書きます。
基礎データを元に患者さんが抱えている問題点を抽出し列挙します。基本的には病名ですが、心理的、社会的な問題点も記録します。 また、これらの問題を治療、解決するための具体的な計画を記録します。このように問題ごとに治療方法を列挙したり、あるいは文章で計画を記録します。
歯管を算定する場合も、治療計画をカルテに記載することが必須です。
P病名は進行度に応じてP1〜P3の病名をつけます。今回はポケットがどれも3mm以下なので、全額でP1とします。入力方法
継続的な口腔内管理をする場合に算定します。算定には管理計画の作成とその説明を患者に行うことが必要です。 カルテには説明した内容の要点を記載します。
管理計画には次の項目の記載が必要です。
ただし、これらを文書にして患者さんに渡し、その写しをカルテに添付し、13に示す文書提供加算を算定した場合は、カルテへの記載を省略できます。
歯周疾患の係る歯科疾患管理料を算定する場合は、歯周検査が必要です。
歯科疾患管理料に係る内容を文書にして患者さんに提供した場合はこの加算がとれます。
文書の写しはカルテに添付します。
歯管の文書など、カルテの添付する文書はスキャンして、この「添付文書」にしまっておくことができます。ダブルクリックするとスキャンした文書が表示されます。
添付文書は「情報パネル」の「添付文書」にまとめて表示されていますので、過去の文書はこの情報パネルから簡単に閲覧できます。
算定には歯科疾患管理料の事前の算定が必須です。同一初診期間に算定されていれば、当月に歯科疾患管理料がなくても算定できます。
算定のあたって、使用した薬材や器具を記載します。
カルテには担当衛生士への指示内容の記載が必要です。
PCRの結果の記載は必須ではないですが、カルテにも記載しておくほうが管理しやすいでしょう。
同じように指導内容の記載は必須ではないですが、カルテに記載すべき情報です。
衛生士実地指導の写しはカルテに添付します。
スケーリングに用いた機材は記載しておく必要があります。
スケーリングは時間があれば1日で全顎に行ってもかまいません。
歯周ポケットの洗浄を行なった場合に算定します。カルテには使用薬剤を記載します。
P基処はスケーリング、SRPなどの歯周基本治療を行なった部位に対して算定できます。このように同日でもOKです。
スケーリングの後は必ず1週間から10日ほど経過してから検査をします。数日では返戻あるいは査定の対象となります。
もちろん他の処置を行う場合は並行しておこなって構いません。
歯周治療の後には必ず歯周検査が必要です。P病名がついた全ての部位のスケーリングが終わった後、最後のブロックのスケーリングから1週間から10日ほどあけて歯周検査をして治療の効果を評価します。
1ブロックでもスケーリングされていない部位がある場合は2回目の検査はできません。
電子レセプトには日付情報が付加されていますので日数は必ずチェックされます。処置されたブロックも表示されてチェックされています。また初診で情報が区切られることなくその前の情報も常に縦覧されています。
このため、最近は歯周治療で検査で終わっていない場合は、P病名が治癒とみなさない県が多くなってます。
このような県の場合、検査がなくて治療を終了した場合では、中2ヶ月あけて(3ヶ月目)来院した場合でも初診になりません。(半年以上空けると初診にできようです。)
POMRでは経過記録はSOAP形式で記載します。
前回の処置からの経過を問診し、それをSとして記載します。
検査結果、視診等の記録はOとして記載します。
検査結果をカルテに添付してあったとしても、術者として着目している点を明確にするという意味で重複した事項でも記載します。
厳密に言えば、歯周基本検査はここに記載すべきですが、このように記載した方が読みやすいし入力も簡単です。
OとSから導き出される術者の評価、考えをAとして記載します。
具体的な計画はここに書きます。この例では指導の必要を計画しました。
実際に実施したことも重複していたとしても別に記載しておくといいでしょう。(この例では【指導】の部分の記載)
初診時に考察の中で言及している6番に関しての経過を記載しています。
歯管を算定している場合、カルテ上で計画の完了を明記しておくといいでしょう。これがない場合、計画が継続していると解釈されて、次回中2ヶ月経過しても、初診にできない場合があります。
また、この日までに、頭書に記載した病名の転帰を治癒にしておきます。